SDGsが話題を集めています。「持続可能な開発目標」などと訳され、スマートシティを理解するうえで、重要なキーワードの一つです。今回は、スマートシティとSDGsの関係、そして未来の社会の「しあわせ」について考えてみたいと思います。
SDGsとは?

まずはSDGsについて簡単におさらいしておきましょう。SDGsとは、2015年に国連で開かれたサミットにおいて定められた国際社会の目標のこと。「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」を略して、「エスディージーズ」と呼ばれます。
具体的には、17の目標を2030年までに達成することを目指しています。17の目標は以下の通り。
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロに
- すべての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなにそしてクリーンに
- 働きがいも経済成長も
- 産業と技術革新の基盤をつくろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくりを
- つくる責任つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさも守ろう
- 平和と公正をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
それぞれの目標をさらに具体的にしたものとして、「169のターゲット」が設定されています。たとえば、「01. 貧困をなくそう」では…
「2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる」
「各国において最低限の基準を含む適切な社会保護制度及び対策を実施し、2030年までに貧困層及び脆弱層に対し十分な保護を達成する」
ことがターゲットになっています。
スマートシティでは、現代の社会が抱える課題の多くが解決済み

SDGsとスマートシティはどんな関係にあるのでしょうか。国土交通省によるスマートシティの定義にはこうあります。
「都市の抱える諸課題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」
つまり、スマートシティとはデジタルテクノロジーを使って現在の都市が抱えている課題を解決できるような街のことということになります。
「現在の都市が抱えている課題」とは、SDGsそのものを指しますから、国内外で推進されているスマートシティ計画は、SDGsを解決するための試みであるといいかえることができるでしょう。
SDGsの達成を後押しするのはデジタルテクノロジーの発展

たしかに、情報通信技術などデジタルテクノロジーが発展すれば、SDGsの多くが解決されることになります。
たとえば、IoTやAI、ビッグデータを活用したスマート農業が実現すれば、より効率的な生産が可能になり、世界の飢餓を減らすことにつながるでしょう。また、スマートグリッドシステムが実装されれば、あらゆる人にクリーンなエネルギーを供給することが可能になります。
とはいえ、デジタルテクノロジーによって単に便利になった街のことをスマートシティというわけではありません。スマートシティにおいて最も大切なのは、それが「人間中心の社会」であることだからです。
では、「人間中心の社会」を実現する鍵になるのもとはなんでしょうか?実は、これもまたデジタルテクノロジーだと考えられています。
従来は、あらゆる情報を人が解析することで価値が生み出されてきました。たとえば、ロボット技術は古くからありますが、ロボットに指示を出していたのは人間です。つまり、人の価値観のもとで、生産方法や生産物が決められていました。
ところが、AIが情報を解析するようになれば、人間にはない発想や提案のもとでロボットが自動的に生産活動をするようになります。すると、これまでにない新しい価値が社会にもたらされることになるというのです。
来るべき人間中心の社会で問われる「しあわせ」

では、デジタルテクノロジーが進歩し、現代の社会が抱える課題の多くが解決された社会において、人はどんなことにしあわせを感じるのでしょうか?
そもそも、技術革新によって新しい価値が社会にもたらされるのであれば、「しあわせ」の意味さえもが、今とは大きく変わってしまうかもしれません。たとえば、肌触りのいい服を着て、おいしいものを食べ、快適な部屋で過ごすことが「しあわせ」だったとしたら、それらが当たり前になった社会でも、わたしたちはそこに「しあわせ」を感じるのでしょうか?
「しあわせ」とは何か?テクノロジーによってそれをどうやって実現するのか?課題を解決する過程において、常に問い続ける必要がありそうです。
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